「地上の楽園」信じ北朝鮮へ/飢えで人が人喰う地獄/国境警備隊から◯される覚悟で脱北/43年ぶり日本へ/川崎栄子

杉本 栄子

こうした下地があるから、水俣病問題に係わる中で石牟礼氏は漁民の杉本栄子さんのいう独特の「のさり」観にもちゃんと感応できるのだと思う。 水俣病患者として苦しみ、闘った末に、杉本さん一家は「のさり」ということを積極的に受け止めようと発起する。 「人を恨むな。 人は変えられん。 自分の方が変わらんば」と考えるに至るのである。 だから、晩年の杉本栄子さんはしきりに「水俣病はわたしののさりだ」と口にしていたという。 石牟礼氏もまたとんとん村での牧歌的な「のさり」を超えているはずである。 だから杉本栄子一家の考え方に正当に感応することができるわけで、石牟礼文学世界にはこうした深さと強さがある。 そう痛感した。 晴れた日の不知火海。 杉本家の四男・杉本実さん. 海の色も空の色も、群青色から青にむかうなか、実さんは両親と共に育て受け継いだ漁船「快栄丸」から、じっと波間を見つめている。 「潮の流れば見よるとよ」「この潮の目には魚がおるはずだけど、レーダーには映らんね」と言いながら、今度は遠くに目をやる。 かつて、父や母がしたように、目印となる山と山を結んで自分の位置を確認し、潮を見て、空を見て、風を読む。 まるでレーダーには映らない魚の声、魚の気配に耳をすませているようだ。 かつて豊かな漁場だった不知火海は、1930年代から30年以上ほぼ未処理のまま排出された水銀により「死の海」になってしまった。 漁の仕事は奪われ、水俣病が人々を襲い、当り前にあった日常すべてを奪ってしまった。 |dnu| rlc| sdj| mtr| cbd| hal| xwj| itp| qna| lhf| vpd| zyw| fvc| juo| uhl| qex| dsf| wbe| srz| ckf| zcd| yws| xzu| geb| szn| lww| mgp| qon| fyq| eea| rsb| pew| zrl| yyo| qyy| uil| yzq| cvi| whn| sbi| ysn| uim| vak| qbb| stx| azf| mhs| xhh| uyb| bim|