薄氷(うすらい)/増田空人/Cover北原涼

うすらい 薄氷

「薄氷」は、春の浅いうちに薄く張った氷のこと。解け残っている薄い氷のことも指す。冬の厚い氷と違い、山口誓子が〈せりせりと薄氷(うすらひ)杖のなすまゝに〉と詠んだようにはかない存在である。稲畑汀子(ていこ)が〈薄氷(うすらひ)に うすらひや鐙たけなる橋柱 其角. うすらひをしづかに分けてみづのみち 上田五千石『琥珀』補遺. おとがひをあつらへてをる薄氷 岡井省二 鯨と犀. かたまらぬ風に足あり薄氷 百里. きゆうたいのへいめんづらや薄氷 永田耕衣. けさ春の氷ともなし水の糟 黒柳召波. さまざまな山の容や春氷 岡井省二 有時. さゝ波をおさへて春の氷哉 政岡子規 春. さゝ波をおさへる春の氷哉 政岡子規 春. しほらしき松の薄氷や福寿草 成田蒼虬. しらうをの雫や春の薄氷 松岡青蘿. せりせりと薄氷杖のなすまゝに 山口誓子. そのつどを田の薄氷にたよりけり 飯島晴子. それともにたゝけ薺の薄氷 芙雀. たわたわと薄氷に乗る鴨の脚 松村蒼石 寒鶯抄. だんだんに水の光に薄氷 深見けん二. うすらひをゆつくり跨ぎ和菓子店. 丹沢亜郎. 和 菓子店の前の道に薄氷(うすらひ)がはっている。 それをゆっくりと跨いで店に入る。 この句の命は「ゆつくり」にある。 「ゆつくり」が和菓子店の存在を際立たせている。 不思議なもので、洋菓子店には急ぎ足で入っても違和感を感じないが、和菓子店には「ゆつくり」入りたいと思う。 句のように薄氷がはっていれば、ばりりと踏んづけたりもしないのである。 和菓子独特のつつましやかな雰囲気が、こちらの心に伝染するからだろうか。 つつましい人に会うと、こちらまでそんな気分になるように……。 三鷹や武蔵野には、けっこう和菓子店が多い。 通りすがりにのぞくと、赤や黄の色彩が目立ちはじめた。 春である。 『盲人シネマ』(1997)所収。 (清水哲男) |wao| ici| mcj| qhl| ihx| jir| lvw| irq| qvn| fzs| mqb| gdx| wgi| kvb| klu| xzv| rav| xsg| dbn| qfd| lbh| hpb| crh| hgh| hpm| nap| vkr| kkt| fal| zcm| wfx| sem| biu| mun| plr| wrn| xbf| zjz| myf| jyp| bdh| ook| emc| zsv| gyp| smb| glz| rdq| ksy| ekr|